●2004年06月 萩・出雲旅行編
其の2:IZUMO
<6月2日>
■萩
朝、起きた後、さっそく温泉で目をさます。
その後、朝食。
朝はバイキングで適当なモノをとってくる。
腹持ちの関係上、ご飯と味噌汁でチョイスしてみた。
部屋に戻って準備をして、8時10分に宿出発。
ここまでは親と一緒だったけれど、ここからは別行動になる。
親2名はここから津和野へ。そして俺は出雲市へ。

ホテルから10分ほど歩くと、萩のバスセンターがあった。
とりあえず益田駅までの乗車券を購入してバスを待つ。
発車予定時刻(8時半)の数分前にバス到着。
早速乗り込む。乗客は俺1人。
気兼ねなくシートの背もたれを倒してくつろぐ。
発車時刻を2分ほど過ぎても他に誰も乗る気配がないので、
乗客は俺一人という状況のままバスは発車した。
益田駅までは約1時間半。
バスは海沿いの道をいく。
一面に広がる日本海。遠くに消えてゆく飛行機雲。
うーん、素晴らしい眺めだ。
時折見えてくる海沿いの集落が、のどかでまた良い感じ。
なんとなく、どこかのゲームっぽいカンジかもしれないと思った。
ひょっとして……もし、途中でバス代なくなってド田舎で降りることになったら、
クソガキに商売道具の人形が蹴飛ばされるのだろうか。
空腹で倒れて、漁協の人に助けられるのだろうか。
サッカーボールみたいなおにぎり食べてたら、ヘンな少女に声をかけられるのだろうか。
……んなわけはないよな。
そもそも俺は翼の生えた少女なんて探してないし。
通天閣Tシャツなんか着ちゃった女医なんて、怖くて会えたもんじゃないし。
地球外生命体のぴこぴこダンスが目撃された日には、
発狂してしまうかもしれないし。
ううっ、怖いこと考えるのはやめよう。
■益田

バスは途中、須佐駅前で1人、江崎本町で1人を乗せた以外に乗り降りは無く、
最終的に乗客3人で益田駅に到着した。
ちなみに、途中で萩・石見空港を通過しているのだが、
ここでも乗り降りはゼロ。
まぁ、飛行機の発着前後でなければ、そんなもんかもしれない。
30分ほど時間があるので、少し駅前をフラフラしてみたが……
恐ろしく何もない。コンビニすらない。
これでも比較的大きな街だというのだから。
恐るべし……島根県。
結局することもなく、駅のベンチで待つこと約20分ほど。
特急スーパーおき2号が到着した。
素晴らしい。ディーゼルサウンドがステキすぎる。
車内は比較的シンプルなデザイン。
自由席は比較的混雑していたものの、俺の乗った指定席はガラガラ。
MAX120km/hの快適な列車の旅を楽しむ。
んー、やっぱ旅はこうでなくちゃね。
ここまでは車と飛行機だけだったので、ちょっと嬉しかった。

■日御崎

列車は定刻に出雲市へ到着。
さすがに、益田や東萩に比べると、キレイで立派な駅だった。
駅舎の入口は出雲大社をイメージしているのか、独特な雰囲気。
とりあえず、まずはバス乗場へ。
一畑バスで日御崎へ向かう。
バスは途中、出雲大社を通り過ぎ、終点まで向かう。
日御崎には東洋一と言われる大きな灯台があって、そこに行ってみたかったのである。
実際に中に入ることができる灯台というのは少ない。
横浜のマリンタワーや、神戸のポートタワーはその数少ないものであるけど、
あれはいかにも観光用ってカンジで、あんまり面白くない。
やっぱり、いかにも灯台!って雰囲気のところに入ってみたいものなのである。
それが実現できる場所。
それこそが、この日御崎灯台なのである。

まず1階で見学料150円を払い、靴を脱いで内部へ。
すぐに螺旋階段に出るのだが……これが恐ろしく急で、しかも足場が小さい。
はっきり言おう。めっちゃくちゃ怖い。
階段自体は160段ほど。まぁ、ちょっと疲れる程度のものでしかない。
でも、精神的にドッとくるものがある。
高所恐怖症の方は、近寄らないことをオススメしたい。

階段を上がりきると、狭い展望台に出られる。
ただ、狭い上に吹き付ける風がものすごく強いので、スリルは階段以上。
もときた階段を降りきった時、ジェットコースターに乗った後のような不思議な浮遊感が残っていた。

ま、何だかんだ言って面白かった灯台を後にして、バス停の方に戻る。
バス停そばに日御崎神社というキレイな神社があったのだが、生憎工事中。
あんまりのんびり見ていられる雰囲気でもないので、すぐに出ることにした。

バス停に戻ると、まだバスの時間まで30分ほどあった。
しょうがないので、バス停そばの土産屋で、美味しそうな匂いの焼きイカを所望。
土産屋のおばちゃん曰く「日御崎に来たら、これを食べなきゃ〜」とのこと。
うん、なかなか柔らかくて美味しい。
ついでにバスの乗車券も買えるという話だったので、出雲大社まで買っておく。
■出雲大社
バスはのんびりと海沿いの道を進んでいく。
20分ほどで出雲大社に到着。
バスを降りてすぐ、バス停近くにある蕎麦屋「八雲」へと入る。
やっぱり、出雲に来たら『出雲そば』しかないでしょ。
このために、日御崎では焼イカだけで我慢したのさ。フフ。
出雲そばは、いわゆる割子そば。
段重ねの少し小さな入れ物に分けられたそばに、
ピリ辛の薬味とつゆをかけて食べる。
三段重ねと五段重ねがあったので、せっかくだし五段を注文。
食べてみて思った。五段で正解。
量の上でもそうなんだけど、何と言っても味が最高!
うまいんで、ツルツル入っていくんだわ。これが。
五段そばをあっという間にたいらげて満足満足。
最後に蕎麦湯をズズっと飲む。んー、エクセレント!
食後はいよいよ出雲大社へ。
まず神楽殿とゆーところで、でっかい注連縄を見る。
……すっげぇ……これが日本一でかいという……。
よく見ると注連縄には硬貨がブスブスさし込まれていた。
本当に日本人って、こういうの好きだよなぁ……。
よく、硬貨が刺さった神木とか見るけど、こういうのは止めて欲しいと思う。
やってくれと推奨されているならいざ知らず。
賽銭はちゃんと箱に入れましょうや、みなさん。


そんなこんなを思いつつ、神楽殿から右へ進むと出雲大社の拝殿が見えてきた。
奥に本殿も見えるけど、とりあえずは拝殿に向かう。

えーと、何々? 何か書いてあるな……。
2礼、4拍手、1礼でお参りせよと?
別にウチは神道じゃないから、こういうのはよく知らんのだけど、
面白そうだからやってみる。
頭2回下げて……拍手を……4回だっけ?
んで、頭を下げる……と。
あ、いかん。せっかくなんだし何か願掛けしとくか。
出雲大社と言えば縁結び。
ひとつどーかよろしく。
…………。
熱心に祈った。
未だかつて無いくらい、熱心に祈った。
ああ神頼みしたいくらいの状況だよ悪いかコンチクショウ(爆)。
その後、奥にある本殿をちらっと見て、一旦参道から外へ出た。
ちょっと行ってみたい場所があったのである。
参道入口から歩くこと15分ほど。
バス通りから少し入ったところにそれはあった。

旧JR大社駅。
平成2年に廃線になり、今では使われていない旧大社線の終点。
その昔は東京から直通列車も出ていたという由緒ある駅舎が、
今はひっそりと、その場所に佇んでいた。

出雲大社をイメージして造られたという、風情溢れる駅舎。
今も、中に入ることができる。
そのしっかりとした造りは、賑やかだったころを思い起こさせる。
観光案内所、キップ売場、駅事務室、ホーム……。
様々なドラマがあったのだろう。いつか、その場所で。
俺はしばし、その場所に立って、遠い日の記憶を眺めていた。


ふと駅舎の入口付近を見ると、観光客用の書き込みノートがあった。
ペラペラとめくってみる。
「感動した」
「ずっと残していってください」
俺もそう思った。
特に、近代的な駅が必要とされる都会に住む住人にとっては、
こういう場所が残されていることはすごく大切だと思う。
さらにノートをめくってみる。
「期待していたけど……巫女さんの大半は……」
俺もそう思った。
……じゃなくて。
誰だ、んなこと書いたのは。
俺も書き込みを残すことにする。
「イヤッホーゥ! 今日は萌える巫女さんが多くてサイコー!」
……アホらし。やめておこう。
もと来た道を戻って再び出雲大社へ。
ふと周囲を見回してみる。
……ああ……萌えるぜ……。
違う。
拝殿では何か神事が行われようとしていた。
太鼓の音が鳴り響く。
社務所にいた巫女さんたちが、それを合図に片付けを始めた。
一日の業務?を終えるチャイムのようなものなのだろうか。
俺はしばし、その神事を眺め、
バスの時間が迫ってきたのを確認してから、その場所を後にした。

出雲市駅で土産を購入する。
今回は1泊だけの短いやつだから……
……人に頼まれたヤツ以外は、マイシスターに買うくらいでいいか。
てゆーか、あんまり選んでいる時間無いし。
20分ほどで最低限必要なものを選び出し、バス乗場へ向かう。
ほどなく空港行連絡バスが到着。いよいよ旅も終わりだ。
バスの発車前、運転手が乗客に確認をとった。
「皆様、空港まで行かれますか? 他の停留所で降りられる方はいらっしゃいませんか?」
反応なし。
運転手はそれを確認すると、
「皆様、空港まで行かれるようですので、停留所の案内は控えさせていただきます」
空港まで約30分。
とても静かな30分だった。

■出雲空港
空港に入り、まずはチェックイン。
窓側席を希望。ちょっと後ろの方らしいけど、取れたのでOK。
その後、ちょっとだけ土産屋をひやかしてから、搭乗口へ。
待合ロビーは結構混雑していた。
ほとんどはサラリーマンらしい。
ちょうど同じくらいの時刻に、東京、大阪、名古屋の三大都市へ飛行機が出るため、
異常に混雑しているようだった。
出発10分前に搭乗開始。
乗り込む飛行機はエアバスA300-600。
あれ……? もっと小さい飛行機だと思ってたんだけど……違ったか。
急な機体変更があったのか、それとも6月から正式に変更されたのか。
わからないけど、小さいヤツより狭っ苦しいカンジが無いので、ありがたいと思った。
飛行機は出雲空港を15分ほど遅れて離陸。
眼下には宍道湖。そして日本海。
紅い夕日が沈みゆくその景色は美しいの一言。
他に言葉が出てこない。
映画「紅の豚」でフィオが言っていたセリフを思い出す。
――きれい……世界って本当にきれい。
宍道湖のサンセットクルーズは人気が高いという。
その理由が、とてもよくわかった気がした。
やがて日が沈み、夕闇がやってくる。
最初は青。
しばらくすると、空の青と海の青が一つになり……
世界は一つの青に染まる。
そして、それはやがて黒き闇へと変わっていく。
自然が作り出す色のアニメーション。
見ていて、飽きなかった。
羽田まではわずか1時間5分程度のフライト。
25分かけて上昇。25分かけて降下。間の15分のうちに、スチュワーデスは
ドリンクサービスなんかをテキパキ行っていく。
天気は良かったものの、気流は結構乱れているようで、
最初から最後までほぼ揺れ続けていた。
電車の車内販売も大変だけど、こういう時のドリンクサービスも大変そうだなと思った。
着陸の10分ほど前。
ふと、何気なく窓の外を見た。
そこには東京湾と、その周囲に広がる大都市の光が煌いていた。
飛行機は一度、房総半島の方へ抜けてから羽田へ向かう。
東京湾の真ん中に一筋の光の線。
あれはアクアラインだろうか。
その向こうの明かりは、川崎。そして横浜。
住み慣れすぎて、何もないつまらない街だと思っていたけど。
平凡で、クソみたいな街だと思ったこともあるけど。
美しかった。
ただ、この時だけは、この街って本当にすごいって思った。
飛行機は羽田へ着陸する。
出発が遅れた分、着陸も15分ほどの遅れ。
けれども、この短い旅が15分でも長く続いたかと思うと、
逆に、ちょっとだけ嬉しかった。
エスカレーターを降り、京急のホームへと向かう。
戻ってきた日常。
帰宅ラッシュに飲み込まれる。
旅が終わる時、毎回味わう「ああ、もう終わりなんだ」という思いは今回も同じだった。
だけど。
これでいいのかもしれない。
また、しばらく後には次の旅があるから。
そのために、日々を過ごしていく。
そういうのも、悪くないのかもしれないと思った。
次はどこに行こう。どれくらいの期間でかけよう。
そう。旅は、次があるから、面白い。