●2004年07月 熊野旅行編
其の2:熊野三山制覇
<7月14日>
■紀伊勝浦
朝は6時に目が覚めた。早速、温泉に足を運ぶ。
うーん、やっぱり温泉は気持ちがいい。最高。
湯は少し硫黄分の混じった単純泉。少し熱かったけど、俺はそれくらいでちょうど良いと思った。
サッパリした後、荷物をまとめて食事に行く。
朝は和定食。まぁ、ありがちな感じ。特別うまくもなく、まずくもなく。
食後、準備をしてから8時20分頃チェックアウト。
部屋が広かったのと、温泉に入れたことを考えれば6千円は安いもんだろう。
立地も駅前で良いし。
俺は少し早歩きで駅前のバス停に向かう。わずか3分ほどで到着。
目的のバスは既に停車中だった。
バスのそばまで行くと、係員が「往復乗車券を先に購入してくれ」と言ってきた。
俺はゾーン券で乗れるのでその旨を伝えると、帰りのバスの時刻表を渡してくれた。
おや……事前に調べたのと、5分くらい時間が違ってる……。
これは大助かり。バスを1本逃すと大変なことになるから。
バスに乗り込むと、席がほとんど埋まっていた。
何でこんなに人が多いんだ? と思いつつ、空いている席に落ち着く。
ほどなく運転手が乗り込んできておもむろに説明を始めた。
「今日は那智の火祭で帰りは渋滞が予想されます。
祭の山場となる14時以降に下山を予定されている方は、列車への接続などに十分ご注意ください」
なるほど。俺は全く知らずに来たけど、今日は祭だったのか。
人が多いわけである。
今日は熊野本宮に寄ってから紀伊田辺まで行く予定なのだけど、
予定を変更して祭を見ていくのもいいかな、と思う。
ただ、列車の本数が少ないだけに、予定を変更した時はどういう状況になるのかわからないのが怖い。
バスの車内で揺られながら、予定をどうするかずっと考えていた。
■那智山
那智山は大勢の人出で賑わっていた。
人が多いのは余り好きじゃないけど、祭の時の雰囲気は案外キライじゃない。
とりあえず、まずは熊野那智大社に行こうと、階段を上る。
……暑い。
参道脇の売店で売っているラムネが美味しそうで、思わず買おうかと思ってしまうけど、
気温が高くなる前にできるだけ見て回りたいので、後回しにしようと先へ進む。

那智大社は、速玉大社同様、朱塗りの美しい神社だった。
ただ、明らかに違うのはそこに集う人の数。
祭に参加するもの、見に来たもの。そして、俺みたいに何も知らずにノコノコやって来たもの。
様々な人が入り乱れて、境内はすごい熱気。
10時くらいからは式典? が行われるようで、神社の人もその準備に忙しい。

とりあえず、俺は祭目的で来たわけじゃないので、
ある程度境内を見て回ってから、すぐ隣にある青岸渡寺、三重の塔、飛瀧神社と
あの有名な那智大滝へ向かって少しずつ近付いていく。

三重の塔のあたりからは、既に滝が視界に入り込んできていた。
落差133m。日本の滝百選にも選ばれているだけあって立派なものである。
早く近くまで行ってみたいと、気がはやる。

三重の塔から滝前までは、熊野古道を抜けて行った。
森の中の石の階段は、新しいようで古さを感じさせる。
近くの大門坂付近は非常に雰囲気も良いらしいが、今回は時間の都合上、それを歩くことはできなかった。
いつかまた、ここに来る時には大門坂にも行ってみたいと思った。

那智大滝は名爆であると同時に、那智山の信仰の中心でもある。
そのため、滝の入口には鳥居が立ち、参道を抜けたその先に大きな滝が待ち構えている。
普段はそこも静かな雰囲気なのだろうが、今日は火祭を見に来た人が場所取りをしていて、
既にものすごい人だかりとなっていた。
俺はその中を抜けて、滝の方へと向かっていく。

……こりゃすごいや。
初めて間近で見る那智大滝は、ものすごい迫力で感動的だった。
300円を払って、更に近くの展望台まで行く。
しぶきが飛んできて、少し気持ちがいい。
水が落ちる圧力で発生する風も気持ちがいい。
圧巻。本当に来てよかったと思える瞬間がそこにはあった。
しばらく滝を眺めてから、もと来た道を戻り、式典の始まる那智大社へと戻った。
ちょうど本殿で行事が始まったようで、それを少し覗いてみる。
……正直、何やってんのかよくわかんなかった。
くそつまんね。
疲れたので、ベンチに座って売店の巫女さんを見る。
……ああ……萌えるぜ……。
2人いるうちの1人がかなりカワイイ。
エロゲに登場する巫女ヒロインに、そのまま出演してそうなカンジだった。
はだけた袴から見える白い素肌が……うおおおおおっ!!
俺は神聖な祭の中で何を妄想してるんだろうか。
ふと、バチが当たりそうな気がして、妄想を振り払った。
でも。
……やっぱり……萌えるぜ……
俺は妹スキーだけど、実は巫女さんも好きだった。
バスの時間が近付いてきたので、泣く泣く巫女さんと別れを告げる。
結局、火祭の山場を見ることはやめて、予定通り熊野本宮へ向かうことにしたのだった。
理由は2つ。
時刻表を持ってきていないので、調べてある列車の時刻以外わからないこと。
もう一つは、せっかくだから、熊野三山を全部巡ってみたいと思ったこと。
さすがにこれからが祭り本番だからだろうか。
帰りのバスはやたらと空いていた。
■紀伊勝浦

紀伊勝浦の駅まで戻り、特急スーパーくろしお1号に乗り換える。
ゾーン券は、こうやってわずかな区間でも特急に乗れるのが嬉しい。
スーパーくろしおは、振り子列車の中でも伝説と化している381系。
現代主流の制御振子ではないので、非常に強引な揺れ方をする。
こんなので長時間揺られていたら、なるほど酔うのも無理はない。
もっとも、俺は新宮までの乗車。時間にしてわずか10分ちょっと。
この程度の時間で酔うほど、俺はヤワじゃない。
■熊野交通バス
新宮でバスに乗り換える。
今回使っている南紀ゾーン券は、新宮〜本宮〜田辺間のバスにも乗り放題となっている。
これは本当に便利な話。
JRバスなら使えるという切符は多いが、それ以外のバス会社でも使える例は案外少ないのである。
新宮〜本宮までは1500円。本宮〜田辺までは2000円。
まともに乗ると、この区間のバス代だけで計3500円もかかってしまう。
南紀ゾーン券は一枚5000円で5日間フリー区間乗り放題。
JR特急の自由席にも乗れちゃうわけだから、こんなにお徳なキップはそうそうないだろう。
ちなみに、今日は那智山までの往復でもゾーン券を利用している。
勝浦〜那智山間の往復乗車券は普通に買うと1000円。
つまり、今日のバス代だけで、既に4500円分の元をとったという計算になる。
残りは500円。
昨日と今日、新宮〜勝浦間を特急で往復しているわけだから……
まぁ、旅行2日目にして、既にゾーン券の元は十分にとったわけだ。
関東から南紀に旅行するなら南紀ゾーン券! マジおすすめ!
……って、俺は何を宣伝しているんだ……。
新宮〜本宮までは約1時間半。
熊野川の流れに沿って緑の中を進んでいく。
うーん、雄大な景色。癒される。
バスに乗って1時間もすると、いくつかの温泉地を通り過ぎた。
こういう、大自然の中の温泉ってのも良いよなぁ。
普段の喧騒を忘れるには最高の環境だと思う。
川湯温泉を抜けて細い道を進むと、しばらくして開けたところに出た。
熊野本宮である。
その少し奥、大きな鳥居の近くに熊野本宮大社があった。
バスは大社の目の前まで行ってくれた。
■熊野本宮

本宮大社へはバス停から階段を上っていく。
ほどなく、質素ながらも重厚な造りの建物が見えた。
熊野三山の中心を為す、熊野本宮大社である。
よく写真では見るのだけど、実際に目で見るのとはやはり違う。
その迫力というか、重々しさは、生で見ないとわからない。
しばらくその場に佇んで、歴史に目を向ける。
世界遺産か……。
その価値が少しわかるような気がした。
本宮大社からの階段を降りたところに、茶屋があった。
食事もできるようなので、おもむろに店に入る。
「おすすめはザル蕎麦とめはりのセットです〜」
「んじゃそれで」
出てきためはり寿司見てビックリ。でかい。
しかも美味しい!
めはり寿司ってのは、味付けごはんを醤油ベースで煮込んだ高菜で包んだものなのだけど、
そのシンプルさに似合わず、いい味出してる。
ちなみにザル蕎麦も美味しかった。ここの茶屋、オススメかも。
なお、めはりは基本的に2個セットなのだけど、1つにしてもらうこともできるので、
女性はそうしてもらった方が良いかもしれない。
かなり量があったからな……あれ。
食後は散歩がてら、大斎原(おおゆのはら)へ向かう。
ここはかつて本宮大社があった場所らしい。
本宮大社前バス停から歩いて5分ほど。
すぐに大きな鳥居へと辿り着いた。
……はぁ、でっけぇ……。
あとで知った情報によれば、日本一大きな鳥居なのだとか。
言われて納得の大きさだった。
その鳥居の奥に、わずかばかりの杉並木が続く。
ここも熊野古道の一部らしい。
その並木道の途中に開けた場所があった。大斎原である。
まぁ、今となっては何もないが、昔は立派な社が建っていたのだろう。
悠久の時を偲ばせる。

そして、その並木道の更に奥。
これまで車窓からしか見えなかった熊野川の川原へと道は続いていた。
日本でもトップクラスにキレイな川だとの評価を受ける熊野川。
その透明で涼しげな流れは、見るものに暑さを忘れさせる。
来てよかった。心からそう思えた。

■龍神バス
やがて時間となり、バス停へと戻った。
既に、他のバス待ちの人が、何人か並んでいた。
ほどなくしてやってきたのは、全体緑色した龍神バス。
これから2時間かけて、このバスで紀伊田辺へと向かう。
バスは一度温泉地をぐるっと周回する。
一瞬、同じ所を堂々めぐりするのか?! と心配になったりもしたが、
バスの本数が少ないエリアだけに、
利用客が少しでも居そうなところは全てまわるような路線のつくりかたをしているらしい。
あと、通学バスの役割もあるようで、小学校の前で臨時停車したりもした。
のどかな田舎の光景。
都会では絶対見られない。こういうのって、すごく良い。
やがて小学生も皆下車し、わずか数人が乗るだけとなったバスは快調に紀伊山地を抜けていく。
道は熊野古道に沿うような形で作られているようで、
途中道路脇には、何度か「熊野古道入口」と書かれた案内板が目に映った。
このバスの路線に沿っている中辺路ルートは、苔むした階段などがあって雰囲気がすごく良いらしいと聞く。
いつか、古道の歴史を踏みしめて歩きたいとも思う。
バスはいつしか住宅街の中へと入り込んでいた。
田辺の市街地に辿り着いたのである。
ほどなくバスは駅前へ。定刻どおりに運行できるのは、田舎の道路の強みかもしれない。

■紀伊田辺
駅前から歩くこと10分ほど。
紀伊田辺シティプラザホテルへと辿り着いた。
実は、駅前よりも近くにバス停があったのだけど、
一度駅からの道を歩いておかないと、明日駅に行く時にわからなくなりそうだったので、
わざわざ駅まで行ってから戻って来たというわけである。
この宿は1階にスーパーが入っていたりして、結構大きな建物だった。
5階フロントでキーを受け取り、部屋へ向かう。
まぁ、普通の部屋。特別広くもなく、狭くもなく。

今回は夕食付き8200円のプランだったので、適当な時間にレストランへ向かう。
値段が安いので大したこと無いのかと思っていたけど、
実際に出された料理はちゃんとしたコース料理。
メインのステーキは食べ応えもあったし、全体的に味も良かった。
大満足。
これで朝も付いて8200円なら安いものだろう。
食後、シャワーを浴びてから翌日の予定の確認。
その後、疲れたこともあって、さっさとベッドにもぐりこむ。
明日は最終日。
本州の南の端への旅が、まだ残っていた。