●2004年07月 熊野旅行編
其の3:本州最南端へ
<7月15日>
■紀伊田辺
この日は、昨日と同じく6時頃起きた。
ひととおり出発準備を済ませてから、7時過ぎに朝食をとりにいく。
朝は和定食。コーヒーがセルフサービスで飲み放題だったのだけど、
和食用に日本茶も用意しておいてくれればなぁ、という感じ。
でも、何だかんだで味は良い。時間があればゆっくり食べられたのだけど。
この日の列車は7時55分の発車。
7時半過ぎにはチェックアウトして駅へと向かう。

駅には既に列車が停車中だった。
普通列車の新宮行。
今回、普通列車に乗るのは、これが最初で最後である。
ガラガラの列車に乗り込み、適当に腰掛ける。
車両は105系。ポンコツのロングシート車。これで1時間半は……結構ツラそうに思えた。

■普通列車・新宮行
発車間際になってから、続々と女子校生が乗り込んできた。
車内は一気に混雑する。
まぁ、通学時間帯だけに、当然と言えば当然な話。
彼女らは皆、朝来で下車して、その後はガラガラ状態に戻った。
列車は80km/h前後のスピードで紀伊半島を南下していく。
途中からは海も見え始め、思わず魅入ってしまうような風景が続く。
■串本

列車は定刻に串本へ到着。
このあたりでは数少ない有人駅。町もそこそこ大きい様子である。
俺はここでバスに乗り換える。
もちろん、ここでのバスもゾーン券で乗り降り可能。
一々バス代を払わなくても良いというのは、かなりの交通費節約になる。実にありがたい。
バスは潮岬へ向けて出発した。
途中、住宅街の中の狭い道を抜けていく。
速度を出すと危ないので、エンストするんじゃねーかと思うようなスピードしか出さない。
距離の割に時間がかかる。まぁ、急ぐ旅でもないし、気にするものでもない。
バスで約20分。潮岬灯台前に到着した。
俺はここでバスを降り、灯台へと向かう。
案内板が出てなかったので、適当に当たりをつけて歩くと、
バス停からほど近い、木立の向こうにそれはあった。

潮岬灯台。本州最南端に位置する灯台である。
内部を見学できる数少ない灯台の一つで、入館には200円かかる。
入口でお金を払って、中へ入る。

んー、本当に眺めが良い。
海の向こうに陸地がひとつも見えないというのは壮観。
なるほど、ここが本州の南端なんだと実感する瞬間である。
同時に、このことも実感する。
「地球は丸い」
水平線が、カーブを描いて見える。
狭い日本で、これが体験出来る場所というのも、そう多いものではない。
思わず、ボケーっと眺めてしまっていた。

灯台を出て、徒歩で潮岬観光タワーの方へと向かう。
右手には広々とした芝地が広がり、左手にポツンと建っているタワーが見える。
まずは向かって右手、芝生の中へと歩を進める。
ちょっとした休憩所のようなものがあり、その手前に「本州最南端」の碑がたっていた。
休憩所の向こうは大海原。
ここまで来たんだな、という感慨がふつふつと沸いてきた。

まだ時間があるので、観光タワーにも行った。
入口で入館料を払うと、本州最南端訪問証明書なるものをくれた。
これが入場券代わりらしい。
ちゃんと通し番号までついているあたり、結構本格的である。
……日付が入ってないのが、ちょっと残念だったけど。
タワーは、いかにも場末の観光地という雰囲気。
屋上からの眺めは最高だったのだけど、その下にある民謡ビデオ鑑賞コーナーとか、
さらにその下にあるマジックミラーフロアはショボすぎた。
マジックミラー……一体何だと思ってみれば、
何のことはない、ベコベコ曲がった普通の鏡。
婉曲したミラーに映った物は歪んで見える。ただ、それだけのもの。
そんなのが、適当に何枚か並べてあるだけ。
ぶっちゃけ、やる気ねーだろ、このタワー。
そう思わざるを得ない惨状だった。
タワーを出て、バス乗場を探す。
タワーの目の前にその名の通り「タワー前」というバス停があるのだけど、
もう一つ「潮岬」のバス停が近くにあるはずなのである。
さっき上った観光タワーの屋上から探してみたのだけど、そこからは見つからなかった。
見えないくらい遠くにあるわけがない。でも、どこにも見えない。
答えは単純だった。
タワーの真下。
屋上からは陰になって見えないところに、潮岬バス停があったのである。
まさに、灯台下暗し。
……それじゃ、「タワー前」のバス停の意義って一体……?
たぶん、それは訊いちゃいけないことなんだろう。
潮岬からバスに乗り、橋杭岩まで向かう。
この橋杭岩が、今回最後の観光ポイントである。

橋杭岩はその名の通り、杭のような岩が、橋げたのように一続きになって並んでいるところである。
なかなかに荒々しく、男性的な海岸風景。
大学の卒論で海岸の奇岩について研究していた身としては、興味をそそられるところである。
とはいえ、今回は別に研究目的で来たわけではない。
単純に景色を楽しみ、磯遊びを楽しむ。
近くにJRの線路があるらしい。
時折、列車が軽快な音をたてて通り過ぎていった。
1時間ほど時間を使い、駅前に戻る。
昼ごはんを食べてから土産を購入し、特急列車へと乗り込む。
■特急オーシャンアロー20号

特急オーシャンアロー20号。京都行。
初日に新宮〜勝浦間でも乗車したこの列車は、本当に乗り心地が良い。
軽快に白浜、紀伊田辺、御坊、和歌山と紀勢本線を駆け抜けていく。
串本を出発してすぐに車内販売が来た。
今度はデブじゃなかったけど、工藤だった。
ジャイアンツだった。サウスポーって感じだった。
工藤はしっかりとした接客で、冷たいドリンクやおつまみなどを販売している。
やはり接客業たるもの、こうでなくてはいかん。
工藤は笑顔も絶やさない。偉いぞ工藤、がんばれ工藤。
工藤はどっかのデブと違って立派に働いていた。
白浜を過ぎると車内は一気に混雑して、工藤も忙しくなった。
俺もあんまり工藤ばかり見てても面白くないので、車窓を眺める。
オーシャンアローはMAX130km/hで本当に速い。
やはり紀勢本線の特急に乗るなら、「スーパーくろしお」や「くろしお」ではなく、
敢えてオーシャンアローを選ぶべきだと思う。
乗り心地から何から何まで、同じ値段とは思えない。実に快適だった。
列車は和歌山を過ぎ、阪和線へ入る。
阪和線区間ではノンストップで天王寺へ。
うーん、一気に大都会へ戻ってきたなぁ……。
列車は環状線をのんびりと走り、新大阪へ。
ここでほとんどの乗客を降ろした後、京都線を爆走して終着京都へ。
■京都

ホームへ降りると、京都特有の熱気が襲ってきた。
夕方だったので、日中に比べれば、これでもマシな方なのだろう。
やはり、盆地の夏は暑い。
京都ではちょっとだけ途中下車。
京漬物と八つ橋を買う。……なんかいつもと買ってるもんが同じだなぁ。
ついでに券売機でICOCAを買う。
これが8月から東日本でも使えるようになるのか……。便利になるなぁ。
でも、わざわざICOCAを関東で使う物好きなんて、そうそういるのだろうか。
生まれついての関東在住なのに、SUICA持ってなくて、ICOCAを使うアホー。
こんなの俺くらいじゃないだろーか。
まぁ、誰かに迷惑かけるわけじゃないし、大した問題ではないのだけど。
京都はあと数日で祇園祭の山場を迎える。
大河ドラマの新撰組も、池田屋事件のあたりを放送。
今、京都の街が熱い。
このまま家に帰るんじゃなくて、ここで1泊して京都観光に行きたい気分だった。
京都は何度も行っているけど、全然飽きない。
不思議な魅力がそこにはあるのだ。
ほどなく時間になり、新幹線のホームへと向かう。
旅の最後は再び「のぞみ」。
カモノハシのような700系車両が入線してきた。
名古屋からはほぼ満席となって、新横浜、東京へ向かう。
今回は非常に充実した旅だった。
久々に2泊できたこともあるけど、紀伊半島が非常に変化に富んでいて、
風景を見ていて全然飽きなかったというのも大きなポイントだと思う。
ゾーン券もフルに活用できたし、そのせいか値段も安上がりだった。
こういう「良い旅」を今後もやっていければいいな、と思った。
そして、これで残すところ、まだ未踏破の都道府県は4県だけとなった。
北陸3県。そして四国の愛媛。
俺の日本を巡る旅も、少しずつターニングポイントに近付いていた。