●2003年03月 『あの土地へ…再び』編

其の4:京都ぶらぶら日記

3月10日。天気は曇り時々雪。
今日も関西……というか、京都地方はあいにくの天気だった。

「わ〜。京都です〜。修学旅行以来ですよ〜」

観雪はなんだか楽しそうだった。

まず、俺たちは駅前のバス案内所で「市バス1日乗車券」を買った。
一枚500円。一日で3回以上乗れば元がとれるという、オトクなバス乗車券である。
どの停留所の近くに何があるのか一目でわかるバス路線図ももらえて、観光気分満点。
今後、京都観光に行かれる方は、ぜひ使って欲しい。
マイカーで行く? いけませんいけません。京都は慢性渋滞なんだから。
少しでも公共交通機関を使って移動することがマナーですよ。マナー。仁和寺

とりあえず、時間ももったいないので早速バスに乗り込む。

京都巡り、最初の観光ポイントは仁和寺だった。
京都駅からバスで40〜50分ほど。
嵐山ほどではないが、かなり時間のかかるところに位置している。

「ふぇ〜、結構、京都駅から遠いんですねぇ…」

「まぁ、京都って言っても広いからな。100万人以上が住む大都市だし」

「でも、そういう大都会に風情のあるお寺があるのは、良いですよね〜」

「ああ、まったくだ」

仁和寺は真言宗御室派とかいう宗派の総本山らしい。
俺はあんまりそういう方面に詳しくないからよくわからんのだけど、
総本山とかいうのはなんかカッコいいと思う。

「へ〜、結構広いんですね〜」

観雪の言葉どおり、境内はかなりの面積があった。
バス停の目の前にある仁王門を抜け、奥の金堂まで。
ほぼ正方形で区切られた境内には五重塔やら日本庭園やらいろんなものがあって、
見ていて飽きることのない風情がある。

俺は、そんな空間を大都会の中に持つ、京都の寺院がとても好きだった。

修学旅行以来の京都だと言う観雪も、とても楽しそうな表情を浮かべている。
都会の中のオアシス。そんな言葉が、ある意味では適切なのかもしれない。

雪の舞う境内を、俺たちはゆっくりと散策した。
ゆったりした時間が、とても優しく感じた。


「さて、次はここだ」

「ここが竜安寺ですか〜。石のお庭があるところですよね〜」

「うむ。石庭ばかりが有名だがな。でっかい池のある境内も、なかなか散策にいいぞ」

竜安寺は入ってすぐに池がある。竜安寺を訪れる人の多くは石庭が目当てであり、
あまりそういうところに目を向ける人はいないのかもしれない。、
でも、俺は水のある景色が好きなせいか、ここの広い池はお気に入りだった。

「そーいえば、さっきのお寺にいたご夫婦、仲良くてステキでしたね〜」

「ああ……あの韓国人らしい2人ね。
仲いいのは素晴らしいんだが、俺をカメラマンみたいに扱うのはカンベンして欲しかったな」

「まぁまぁ、しょうがないじゃないですか。こんな寒い平日に観光している人はそう多くないんですし。
頼めるのって、局長さんと私くらいしかいなかったじゃないですか〜」

「でも、3回か4回くらい頼んできおったぞ。遠慮も何もあったもんじゃない(笑)」

「ほら、こっちも撮影お願いしましたし。おあいこですよ〜」

「ん、まぁ……それもそうか」

「ちょうど雪も降ってましたし、相合傘でラブラブな写真撮ってもらえましたしね〜」

「……あーもう、ラブラブ言うな。とっとと行くぞ」

「あ、待ってくださいよ〜」

俺は、ぶっちゃけ照れ屋だった。

竜安寺の石庭にも行きました〜。

「…………」

「…………」

「…………」

「……あの〜、局長さん」

「……何だ?」

「……いえ、座ってじ〜っとしているので、どうしたのかと思いまして」

「観雪、お前もやってみろ」

「はい?」

「こうやって座って、心を静めて……んで、石の声を聞くんだ」

「い、石の声……?!」

「目で見て、心で感じるとでも言うのかな……とにかくやってみろ」

「はぁ。それじゃv」

観雪は腰を落ち着け、じっと石庭を見つめる。
どこか憂いを秘めたような表情が、なかなかサマになっている。

「…………」

「…………」

「…………」

「……どうだ、何か感じるものがあるか?」

「……はい」

「ほぅ……やるな。なかなかこれは難しいもんなんだぞ」

「そうなんですか?」

「ああ。良かったら聞かせてくれ。何を感じたのかを」

「良いんですか?」

「ああ、そっちさえ良ければな」

「はい、それじゃあ……」

…………。
しばしの沈黙。
ややあって。

……ぐきゅるるる〜

「……ん?(汗)」

「うふふ、お腹空いちゃいました〜v」

「…………はぁ」

しょせんはやっぱり観雪だった。


「んーと、仁和寺、竜安寺ときて……お昼も食べましたし、次は金閣寺ですね〜」

京都観光の定番。金閣寺。
正確には鹿苑寺と言い、金ぴかのあの建物も金閣というのが正しいのだが、
まあそんなのは大した問題じゃないだろう。

観光客にしてみれば、京都へやってきたことを一発で証明できる究極の観光ポイントであり、
日本人に偏見持ちまくりの外国人が、日本の家はみんな金閣寺だと思い込んでしまうような
そんな有名なところ。それが金閣の全てと言っても過言ではない。

かく言う俺も、ここには何度も足を運んでいるし、観雪も修学旅行の時に見たのだと言う。
しかしそれでもついつい寄ってしまう何かが、金閣寺にはあった。

竜安寺からバスで数分ほど。
バス停を降り、少し歩いたところに入口があった。

「ああ、お客さん。金閣寺へ行かれるんですか?」

入口を入ろうとしたその時。
俺たちは入口のところに立っていたガードマンの人に呼び止められた。

何だろう? 近くに工事車両が見えるけど、その関係かな?

「あ、はい。そうですけど……何か?」


「あのー、実はですね。金閣は今工事してて、見れないんですよ。
庭園には入れますけど、入っても肝心の金閣はテントに覆われてまして」

「え? そうなんですか?」

ガードマンのセリフは予想外のものだった。
でも、ちゃんとその様子を写した写真まで持って説明してるし、間違いはないのだろう。

「ええ…もし時間おありでしたら、他のお寺さんとかに行かれた方が良いかと思いますよ」

俺たち同様、工事を知らずにやってきた人たちが、
金閣を見れないことを知るや、他の寺院へと散っていく。
確かに金閣が見れないのでは、ここへ入っても意味がない。
タダならまだしも、しっかり拝観料も取られるわけだし、気分的には損である。

しかし。

「観雪、今なにを考えてる?」

「たぶん、局長さんと同じこと考えてると思いますよ〜♪」

俺たちはバカだった。
思いっきりバカだった。
そしてそれこそが、俺たちが一緒に行動できる最大の理由であった。

俺たちは2人とも、
「金閣はどーせ以前に見たことがあるんだし、それが見れないのであれば、
見れなくなっている状況そのものを見たい」と思ってしまうバカなのである。

「決まりだな」

「決まりですね〜」

俺たちはそのまま入口へと向かった。
拝観料を払うと、さすがに申し訳ないと思ったのか、
受付の人がキレイな金閣の絵葉書をくれた。
まぁ、それくらいは当然だろ、と俺は思った。



金閣…? なんかミョーに光り輝いているような?「しかし、これはほとんどギャグですよね〜」

「ああ。三段落ちギャグ写真として撮影できたもんな。いいネタになったぜ。」

「ふふふ。やっぱりこういうハプニングは面白いですよねv」

「俺たちくらいだろうな。これを楽しんでるのって」

……右に掲載した写真を見ていただきたい。
一番上が御馴染み金閣の写真である。
だが……違和感がないだろうか?
この文の冒頭でも書いたが、今日は曇り時々雪。
こんなに光っているはずがない。

そう。これはただの立て看板なのである。
普段の金閣寺がどんなものかを見せるためだけに置かれた写真パネル。
金閣寺には入ってすぐ池があるのだが、
そのほとりにこんなものが置かれていたのだ。
ん? あれ? 立て看板? …じゃあホンモノは?!
では実際の金閣はどうなっていたのかというと。

















…山小屋かよ? おい(笑)。





山小屋?











もはや、金閣の面影も何もあったもんじゃない。
ちなみに、この後金閣の近くまで行ってみたが、金箔が落とされていて
本気で金でもなんでもなかった。

金閣の金箔張りなおし作業は既に終わっているので、
今度機会があったら、キレイになった金閣を見て来たいと思う。


この後、俺たちは上賀茂神社を経由して、知恩院へと向かった。

東山は俺もよく行くが、よくよく考えてみると、円山公園周辺は初めてだ。

「んーと、このあたりにでっかい山門があるらしいんだが……」

「門ですか〜。ん〜……あ、あれ違いますか〜?」

観雪が見つめるその方向。
……あれは……なるほどな。

「……どうやら間違いなさそうだな」

そこには……
俺の想像を遥かに越える大きな門が、どっしりと構えられていた。


とにかくでっかいんですよ。「ふぅ……はぁ……な、何なんだ? この石段……」

「局長さん、体力無いですね〜。置いて行きますよ〜」

日本一の大きさという、でっかい門のその奥。
普通にお寺があるのかと思いきや、
何とそこにはすっげぇ急な石の階段が待ち受けていた。
……なんか、してやられたって気分だよ。こりゃ。

一方、そんな俺を後目に、観雪は元気である。
全然疲れた様子も見せず、階段をぴょこぴょこ上っていく。

「局長さん、年ですか〜? ふふふ」

み、観雪のヤロゥ……。言ってくれるじゃねぇか。
くぬぅぅ、負けてたまるかぁぁぁっ!
俺は自慢じゃないが、負けず嫌いで有名だった。
ガキの頃、オヤジと将棋をやって、1回でも勝つまでは勝負を続けたほどの筋金入りだ。
観雪……その勝負、受けて立つ! 後悔しても遅いぞ!

俺は一度垂れ下がった顔を上げ、気合を振り絞った。
目標! 前方にいる「ですね〜星人(=観雪)」! ロックオン!

うおおおおおおっ!

猛然と観雪を追い上げる。
しかし、観雪は予想以上に手強かった。

「あ、局長さん、スピードアップしてきましたね〜。じゃあ、私は駆け上っちゃいましょうか〜」

猛然と上ってくる俺を見て、この余裕の一言。
まさか?! 駆け上れるほどのゆとりがあるとは?!

俺との距離が再び引き離される。くっ、ま、まずい!
だが俺にはそれを追い上げるだけの気力・体力が、もはや残されていなかった。

くっ……悔しいが……負けた……。
元気だけがとりえの観雪に勝てるわけがなかった。

「ふふふ、びくとり〜v ですね〜♪」

でも、俺は負けても良かった。よく頑張ったんだ。精一杯やった。
それだけは自信を持って言えることだった。

それに……良い事もそれなりにあったしな。
石段を上りきったところでVサインをしている観雪を見て、俺は思った。

観雪……お前、自分の服装のこと、すっかり意識から抜けてるだろ……。
見事なビューティフルホワイトだぜ……。

……この日、観雪は寒い季節とは思えないような短いスカートだった。

ライトアップ!
俺たちは一度駅で夕食を食べ、その後、夜の清水寺へとやって来ていた。
時刻は19時をちょっと回ったところ。
さすがにもう辺りは真っ暗である。

ここで、「おや?」と思った方もいることだろう。
普通だったら、そんな時間にお寺に入れるわけが無い。
清水寺も、比較的遅くまでやってる方だが、
それでも17時半くらいには閉まってしまう。
来たところで無駄な徒労であること、この上ない。

だが、ちょうどこの時期、夜の特別拝観というイベントを実施していた。
今年だけなのか、毎年やっているのかは知らないが、
「ムーンライトながら」の時間までヒマな俺たちには、ちょうどいい時間つぶしになる。
それに、清水寺の御本尊とやらが、ちょうど今、数百年ぶりにご開帳となっているらしく、
それを見ないテは無い! まさにナイスタイミングというヤツである。

んで、↓が
夜の特別v拝観券。
……こういう強調をすると、何故かえっちに聞こえますが、何もありません。寺ですから。

夜の特別拝観券

美しくライトアップされた境内。
その中を2人で歩いていく。

「結構、悪くないかもな。こういうのも」

ライトアップしていると言っても、境内は広い。
完全に明るくはできず、実際のところ、かなり暗い。
でも、かえってそれが、いい具合に演出効果を出していた。
これが公園とかだったら、間違いなく大量のラブラブカップルでとんでも無いことになる。

「そうですね〜。あ、あそこじゃないですか? 御本尊ご開帳。たくさん列ができてますよ〜」

観雪が言う通り、清水の舞台へと通じる通路の途中。
本来の順路よりも左寄りに、かなりの行列ができていた。

「どうやらそうらしいな。よし、行くか」

「はいv ちょっとワクワクします〜」

俺たちも、行列へと足を向けた。


拝観料とは別に、特別拝観料100円を受付で払う。御本尊拝観券。これ100円です。
そして、普段は入ることのできない、舞台の奥の建物の中へ。

「ふぇ〜……像がいっぱいですね〜……」

通路に沿って並ぶいくつもの像。
俺はあんまり仏像なんかに詳しくないから、名前を見たところでイマイチよく理解できない。
でも、仏像それぞれが持つその躍動感、存在感は俺でも感じられる。

「なんか……仏像の目とかさ、まるで本当に動きそうな気がしてくるよな」

「はい〜……どういえば良いのかわからないですけど、なんかスゴイです〜」

観雪も圧倒されている。
あの観雪がその凄さを感じ取れるくらいだから、大したものなんだと思う。

そうこうして進むことしばし。
やがて、人だかりの多い場所に辿り着く。

「……あれが……」

「御本尊……」

そこにあったのは、いくつもある仏像の中でも群を抜く存在感を纏った存在。
別に特別大きいわけでもないし、光輝いているわけでもない。
だが。

威圧感(プレッシャー)。

その圧倒的な存在感は、まさにそう呼んでも良いほどに大きなものとなっていた。
優しげで……それでいて鋭く射抜くような眼光。
そして、全身にオーラを纏ったかのような、不思議な輝き。
内部の照明の影響とかもあるのかもしれないが、その力強さは御本尊と呼ぶにふさわしい。

「…………」

無言。
感想を話し合う家族連れの中で、
楽しげに話すカップルたちの中で、
俺たちは、ただ黙って、それを見上げていた。
それでも、たぶん、考えていることは通じていたんじゃないかって、そんな気がした。


「いや〜、清水は何回も来てるけど、今回は今までで一番良かったな」

夜の舞台。
森の木々の向こうに、明るい京都の町並みが浮かび上がっている。
その美しい光を見ながら、俺たちは今日の出来事を振り返っていた。

「今回は八坂神社でも内部見せてもらえましたし、貴重な体験を多く出来ましたね〜」

そうそう。知恩院に行った後、八坂神社の方に下って行ったら、
内部を拝観できるっていうんで、行ってみたんだっけ。
神道形式の礼をしてくれと言われた時は焦ったけど、どーせ無宗教だから、形式だけ整えれば問題無い(ぉぃ)。

「あの、神社の真下に泉が沸いてるってのは神秘的な話だったよな」

「しかも、そこが青竜の力の源で、東山を魔から守るとかなんとか……
ああいう話って、ちょっと面白いですよね〜。宗教うんぬんは別にして」

仁和寺に始まり、竜安寺、金閣寺、上賀茂神社、知恩院、八坂神社、そして清水寺……。
一日でまわったにしては上々だろう。それだけに思い出になったことも多かった。
でも、そんな一日もこれで終わり。
これから、「ムーンライトながら」で一度地元へと帰らなければならない。
家で確認しなくちゃいけないことがあるし。荷物も一度詰め替えないといけないし。

実際には、旅はまだまだ続く。
今日までは、ほんの序盤戦に過ぎない。でも。
ものすごく長い数日間を過ごしたような気がする。
そのくらい充実していた。いろいろなことがあった。

「さて、そろそろ時間だ。駅に戻るか」

時計はもう8時をまわっている。
これから下にある湧水飲んで帰るとなると、そろそろ移動しないといけない。

「そうですね〜。あ、そうだ。その前にちょっといいですか〜?」

「ん? どーした?」

観雪は近くにいた人に声をかけ…そして俺たちの方に戻ってくる。

「ほら、早く入ってくださいよ〜! 写真撮りましょう〜」

「あ、なるほど。」

俺は観雪の傍に行く。

「いいですか〜? いきますよ〜」

旅の本番はこれから。
でも、とりあえず、関西を巡る旅はこれで終わり。

「は〜い。お願いします〜!」

明日の夜からは、いよいよ九州方面に向けて出発する。
きっとたくさんの思い出ができることだろう。

「ではいきま〜す」

でも、今、この瞬間は今しか楽しめないものだから。

「はい、チーズ!」

この思い出も大切にしていこう、そう思った。

パシャ!

京都の街の灯は、とても優しげに俺たちを包み込んでいた。

ちょっとピンボケしてますね(汗)。


<其の4 あとがき>
これで序盤の関西編終了です。
1回、インターバルを挟んで、其の6から、九州旅行編本編へと入ります。

この旅日記、これまでも、日程や行った場所については実話ということを繰返し言ってきてますけど、
「『ムーンライトながら』で連泊」というのも、やっぱり実話だったりします(^^;。
ながらで早朝に地元へ帰り、その日の夜に再びながらで出発するという…
我ながら何ともアホな行程をしてました。ハイ。
ま、でも、卒業ができるかどうか、通知の確認をしに帰らないといけなかったので、しょーがないんですけどね。

さて、次回は関西編と九州本編を繋ぐ番外のお話の予定。
九州旅行本編のメンバーはどうなるのか?!
そのへんのところを中心に書こうかな〜と思っております。

それでは次回、其の5「いざ、太古の島へ」。お楽しみに(?)

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